あらすじ
沙月は、誰からも嫌われないために、
誰よりも思いやり深くふるまう少女だった。
ヒステリー持ちの教師の機嫌を取り、
クラスの揉めごとをひとりで背負い、
友人たちの“困りごと”をいつの間にか解決してしまう。
——だって、そうしなきゃ愛されないから。
そんな生き方の中心にいたのが、親友の直だった。
沙月は当然、直も自分を必要としていると信じていた。
しかしある日、直はふいに顔をそむける。
理由も告げず、距離だけが静かに開いていく。
“どうして?”
“ねぇ、なんで私を傷つけるの?”
“わたしが、わるかったの?”
思いやりで自分を削り続けた少女の心に、
初めて生まれた濁った感情は——
誰よりも静かで、誰よりも狂おしい“怒り”だった。
そして放課後の昇降口。
沙月と直は、互いの嘘をやさしい声で包みながら、
静かに“終わり”へと歩いていく。