あらすじ
〔 あらすじ 〕
近未来、人類はMNE(Memory Neural Extraction)と呼ばれる技術により人類の記憶はデジタル化され改変不可の標本としてデーターベースに保存されるようになっていた。死者の記憶も時間軸に沿った脳内の電気信号パターンとして忠実に再現され家族や研究者が『追体験』できる時代。
時任璃空はそんなデジタル記憶標本を管理する、とある地方の『記憶標本館』の管理人であった。日々膨大な過去のデータと向き合う彼には誰にも言えない秘密がある。特定の女性の記憶だけを繰り返し閲覧していることだった。
ある日、璃空はその女性—————数年前に事故死した久遠悠里の記憶標本に決定的な異常を発見する。
時間軸に沿って忠実に再現されるはずの彼女の記憶の中で、存在しないはずの人物が悠里と交流していた。しかもその人物は管理人である璃空自身と瓜二つだった。
MNE標本は原則、閲覧者の介入を許さない。なぜ死者の記憶の中で、接点がないはずの『自分』がいるのか、ただのデータ上のバグなのか?
過去の記憶と現在の自我の境界が崩壊し始める時、璃空は『誰かの過去』と『自分というアイデンティティ』を守るため、デジタル標本の深奥(しんおう)に隠された予想もつかない真実に望むことになるのだった。
この物語は改変不可の過去を巡る、『管理者』と『改変された自分』のSFミステリーである。
〔 登場人物 〕
・時任璃空(ときとう りく) 記憶標本館の若き管理人。科学者としての冷静さと死者の記憶に対して深い敬意や尊敬そして感謝の気持ちを持ち日々仕事と向き合っていた。
・久遠悠里(くおん ゆうり)
数年前に不慮の事故で死亡。保存された記憶標本は展示記憶のひとつだった。