あらすじ
「これで最後」と描いた一枚の“行ったことのない街”の絵。
完成の瞬間、彼はそのキャンバスの中へと吸い込まれてしまう。
目を覚ました先は、絵そっくりの異世界・アルセリア王国の王都リュミナ。
空から噴水に落ちてきた彼を助けたのは、身分を隠して街を歩く少女リュシアと、
色と夢を食べる小さな精霊・パレットだった。
この世界で遥は、「描いたものを現実に降ろす」失われた技――
かつて世界を彩った“画術師(えかき)”の力を宿していることを知る。
描いた炎が本物の火になり、描いた花が空気を変え、
やがて、誰かの「叶えられなかった夢」さえも絵として具現化してしまう。
けれど、彼が向き合うのは魔物でも戦争でもない。
大切なものを諦めてしまった人、夢を「なかったこと」にして生きてきた人。
そして、「売れない」という言葉に縛られて、自分の絵を信じられなくなった、過去の自分自身。
王女でありながら夢を手放した少女リュシア、
行き場のない夢の色を見抜く精霊パレットと共に、
遥は今日も、誰かの小さな願いを一枚の絵にする。
――これは、戦わない異世界で、
売れない絵描きが世界と自分の「夢」をもう一度描き直す物語。