あらすじ
『──この身は、ただの「道具」か』
皇国アルストリアに召喚されたのは、隣国エルメンティアの王子、カゲロウだった。 祖国では「忌子」として疎まれ、使い捨ての駒として召喚術の生贄に捧げられた彼を待ち受けていたのは、自らを召喚した冷徹な軍司令官・クラウスの言葉だった。
「お前は厄介な亡国の王子だ。ここでは一兵卒として死ぬ権利も与えてやる」
剣と謀略が渦巻く最前線で、二人は刃を交える。憎悪と蔑みだけが彼らを繋ぐ絆だった。しかし、傷つき倒れたカゲロウを必ず拾いに行くのはクラウスであり、クラウスの危険を無我夢中で救うのはカゲロウであった。
敵同士という確かなはずの関係が、狂おしいほどに歪んでいく──。
凍てついた心を溶かすのは、優しさではない。激しい憎悪の果てに、初めて見えた互いの孤独。亡国の王子と冷徹な司令官。戦場という狂おしい舞台で紡がれる、痛みを伴うほどに歪で純粋な恋の行方は。
「殺せないなら、俺のものになれ」
「……こんな形で縛られるくらいなら、死んだ方がましだ」
運命に弄ばれ、戦場でしか居場所を失くした二人が交わす、決して許されない愛の契約。これは、憎しみのその先でしか、確かめられない恋の物語。