あらすじ
大陸の外れに広がる〈辺境域〉――王都から最も遠い未開の地に、新たな統治者として任じられたのは、若きダークエルフの女性 カレンツ であった。
派手さとは無縁の冷静さと几帳面さ。言葉少なだが誰より勤勉で、怠慢や不正を嫌う性質を持つ。
荒れ果てた村々、止まった水路、技術も商いも失われた土地。
前任の領主が放置した爪痕は深く、住民は未来を信じられずにいる。
カレンツは、唯一信頼できる副官 レリィ とともに、あくまで礼節と理性を忘れぬ姿勢で、一歩ずつ領地を立て直していく。
農地の復旧、工房の再稼働、医療と水利の整備。
ときには近隣諸侯との外交、ときには内部に潜む派閥の処理。
戦ではなく、「生活を守るための政治」こそが彼女の武器であった。
やがて人々は、静けさの中に確かな誠意を湛えるこの若き辺境伯に、再び希望を見いだし始める。
だが、辺境の復興が進むほどに、王都の貴族たちの思惑と、周辺国家の影が濃く迫ってくる。
――これは、
荒野の片隅で“領地”と“民”を守り抜こうとした、一人の女性辺境伯の再建記録。
剣より言葉を、力より整備を、派手さより確実さを重んじる者の、静かで揺るぎない戦いの物語である。