あらすじ
雨宮澄玲(あまみやすみれ)は、生まれつき“世界の音”に敏感で、人の表情や言葉の裏に隠された意味を読み取ることが苦手だった。
周囲と噛み合わない違和感を抱えながらも、彼女にはひとつだけ確かなものがあった。――“描くこと”。
自閉スペクトラム症と診断されてからも、澄玲は色と線の世界に救われ続けてきた。
学校では友達との距離感に悩み、専門学校では才能を認められながらもコミュニケーションの壁に苦しむ。
そして社会人になった澄玲は、好きなことで生きる選択をし、フリーのイラストレーターとして歩き始める。
だが現実は厳しい。
曖昧な依頼の意図が分からない。
急な変更に対応できない。
カフェの雑音に体調を崩し、オンライン会議では言葉が出ない。
「普通」ができない自分を責め、何度も挫折しそうになる。
それでも澄玲は、支えてくれる仲間と、自分の“好き”を信じて立ち上がる。
世界と噛み合わない生きづらさを抱えながら、彼女は色のない現実にひとつずつ“自分の色”を灯していく。
挫折の先にあるのは、誰とも違う、生き方の形。
澄玲の物語は、静かで、痛くて、そして何よりも強い――。
◆登場人物
雨宮 澄玲(あまみや すみれ)/主人公
22歳。自閉スペクトラム症の特性を持つ女性。
感覚過敏が強く、人混み・騒音・複数タスクに弱い。
言葉の裏読みができず、遠回しな表現が苦手。
だが、ひとつのテーマに深く入り込む「過集中」と、
繊細で独自性のある色彩感覚をもつイラストが魅力。
幼少期からの「描くこと」が唯一の拠り所。
“自分のペースで生きること”を学びながら、
フリーのイラストレーターとして活躍していく。
神代 司(かみしろ つかさ)/編集者
28歳。澄玲の初仕事を依頼した出版社の編集者。
無表情で淡々と仕事を進めるが、実は観察力が鋭い。
澄玲の作品に“強さ”を感じ、仕事を依頼し続ける存在。
ただ、言葉がやや端的すぎ、澄玲を誤解させてしまうことも。
実は人の繊細さへの理解が深く、
澄玲にとっての“正しい距離感”を模索していく。
戸田 こころ(とだ こころ)/就労支援員
30歳。穏やかで相手を責めないタイプの女性支援者。
澄玲の相談に乗り、仕事の進め方・休みの取り方・
契約書の読み方まで丁寧にフォローする。
“助けてもらうのは悪いことじゃない”と伝え、
澄玲の大きな支えになる人物。
西野 凛(にしの りん)/フリーのイラストレーター仲間
25歳。明るくサバサバした性格の女性。
フリー業界の現実をよく知っており、
「利用されてるよ、それ」とズバッと言う姉御肌。
SNS運用にも詳しく、澄玲の“外の世界”の視野を広げる存在。
雨宮 奈津(あまみや なつ)/母
優しいが心配性で、過保護になりがちな母。
澄玲の苦しさを理解しきれない部分もあるが、
娘を守りたい気持ちだけは誰より強い。
澄玲の成長とともに、母もまた変わっていく。
雨宮 俊郎(あまみや としろう)/父
無口で不器用な職人気質の父。
言葉では語らないが、澄玲の作品を誰より誇りに思っている。
大切な場面で一言だけ核心を突くタイプ。