あらすじ
昭和八年。神や怪異、或いは異能や魔術のような、超常の概念に溢れた世界。
超常の力を用いるヒトは『境界人』と呼ばれ、畏敬と恐怖の対象となっている。
十年前の関東大震災で全てを失った少年――御影奏彌は、超常の符術を用いる境界人の養子として、東京市内に出没する怪異を駆除する仕事に就いている。
彼の胸の内に在るのは、全てを奪った超常への憎悪。奏彌から全てを奪い去ったのは、正体不詳の怪異が震災の混乱に乗じて引き起こした大火災だった。
故に奏彌は、一切の呵責なく超常を殺し尽くす。僅かでも譲歩すれば、かつての二の舞になると信じて――しかし。
ある日奏彌は、炎を操る少女――焔叢禊に命を救われる。
訊けば彼女は、代々彼女の一族が戦ってきた六人の敵『偽窮者』を倒す使命の最中。彼らは数百年に一度現れ、その心臓を破壊せぬ限り倒せない。その一人によって無数の命が奪われる光景を目の当たりにした奏彌は、禊の使命の手伝いを申し出た。
敵との対話を重んじ、人間を害する怪異の事情にも理解を示す禊の在り方は、奏彌のそれとは対極にあった。奏彌はじめ彼女の思想に嫌悪を示すが、次第に彼女に惹かれ、己の心境の変化を受け入れ始める。
しかし彼女の影には、かつて奏彌から全てを奪った炎の影がちらついて――