あらすじ
吹雪の夜、山上の天文台で起きた一つの事件。
それから数ヶ月。谷の村には平穏が戻ったが、ひとつの噂だけが残った。
――誰もいないはずの天文台の窓に、赤い灯りが揺れた夜があった、と。
事件の生還者・敦史は命を救われたものの、親友や恋人との記憶を失ったままだった。彼の右手には、理由も分からず握りしめ続ける一片の隕石だけが残っていた。
季節が巡り、雪が解け、春の気配が満ちるころ。
敦史の心に、失われた記憶が静かに戻り始める。
それは、親友・輝朗の声と、星々の囁きとともに。
そして時代は移り、現代。
一冊の古い記録帳を受け継いだ青年・水沢悠麻が、星空へ誓う。
「教えてください。あの獣を止める方法を」
記憶を喰らう新たな火種が現代を襲っていた。
百年を越え、途絶えかけた観測は再び動き出す。
忘れられた記憶と星々が、ひとつの運命を指し示す。