あらすじ
「守るために進むのではなく、失ったから止まれなくなる物語。」
英雄として街に慕われる青年イグル。
その優しさは、幼馴染レイとともに育まれ、
街の希望として称えられてきた。
だがある日、森で遭遇した謎の化け物。
それは本来、魔物ではない。
“人間が変異した存在” だった。
人を喰うことで“形”を維持し、
声を失いながらも、執着だけが残った存在――
《フォルス(≒偽りの者)》
その存在は初遭遇の夜、こう告げる。
「オマエ……いい。いつか喰う。必ず。」
その言葉を皮切りに街で行方不明者が増える。
血だけが残り、肉体は消える。
しかし、ある夜――
レイがさらわれる。
イグルは捜索に向かうが遅かった。
深い森の祭壇。
レイは生きたまま、フォルスの群れに囲まれ――
「英雄よ、奪う痛みを知れ。」
かつて英雄に救われたが助けてもらえなかった者。
その憎悪だけが残り、怪物へ変異した存在が笑う。
イグルはその狂気を見届け、
優しさを捨て、怒りに飲まれていく。
だが皮肉にも――
その感情こそ、フォルスが求めていたものだった。
英雄の心を壊し、
理想を腐らせ、
最後に食うため。
イグルは進む。
逃げるためではなく、
取り戻すことすら叶わぬものを前に、ただ前へ。
やがてイグルは気づく。
フォルスは増え続けている。
喰った者ほど強く歪み、
やがて国すら消えるだろう。
そして最終章――
イグルは、レイを喰った張本人と相対する。
その最後の戦いで、彼はある選択を迫られる。
英雄のまま死ぬか、
怪物として世界に生き残るか。
結末は――ハッピーエンド。
ただしそれは、
「大切なものを失っても歩く未来を手に入れた」
という種類の幸せ。
救われる者は少ない。
しかしイグルは生きる。
レイが最後に残した言葉を胸に、
「イグル、前に進んで。」
――血に染まりながらも、前へ。
物語は終わりではなく、
彼の歩く世界の始まり