あらすじ

闘技大会の景品にされた敗戦国の姫。大会で優勝し、私を獲得して妻にしたのは、無口で不器用な元奴隷の最強剣士だった。蔑まれる二人が辺境から国を変える、執着と溺愛のシンデレラストーリー。  大陸北東部の宝石と謳われたアルヴィオン王国は、覇権国家アウグストゥスの侵攻により滅亡した。  両親と国を奪われ、捕虜となった最後の姫・ユスティナは、二年間の地獄のような監禁生活の果てに、闘技大会の優勝者に与えられる「景品」として、檻の中で晒し者にされていた。  尊厳を踏みにじられ、心は氷のように閉ざされていた彼女。しかし、そんな彼女を熱烈な眼差しで見つめる一人の男がいた。  カシウス。奴隷上がりでありながら、その圧倒的な剣技で大会を制した「勇者」。  彼は、貴族たちが期待するような勝利の宴も、富も名声も目に入らないかのように、ただ一心にユスティナの元へと歩み寄る。そして、震える手で彼女の首輪に触れ、こう告げたのだ。 「……やっと、捕まえた。お前は、俺のものだ」  それは、身の毛もよだつ所有宣言であり、同時に、狂気じみた愛の告白だった。  カシウスは、かつてユスティナが捕虜収容所で仲間のために自らの誇りを捨てて跪いた姿を見て以来、彼女を崇拝し、彼女を守るためだけに生きることを誓っていたのだ。  与えられたのは、王都の片隅にある古びた屋敷。  カシウスは夜ごと、ユスティナと同じ寝室にいながら、指一本触れようとはしない。「心が通うまでは触れない」という彼の不器用すぎる誠実さと、獣のような独占欲の狭間で見せる揺らぎ。  毒婦のような貴族たちの嘲笑から、鮮血に染まることも厭わず彼女を守り抜くその姿に、ユスティナの凍てついた心は次第に溶かされていく。二人はやがて心と体を重ね、真の夫婦としての契りを結ぶ。  しかし、運命は二人を安息の地に留めてはおかなかった。  辺境の領主として赴任し、荒れ果てた地を二人の手で楽園へと変え、愛娘アイリスを授かった頃――悲劇は唐突に訪れる。  カシウスの戦場への不在を狙った領民の反乱。奴隷時代のカシウスの主人であった悪徳商人ゴルビオの陰謀。  反乱の手から逃げ延びる際、ユスティナは最愛の娘アイリスを地面に落としてしまう。娘は反乱軍の手に渡り、敵国であるレギス王国へと売り飛ばされてしまう。ユスティナは心労と事故により、お腹にいた二人目の子供を流産してしまう。  守るべき家族を奪われ、小さな亡骸を抱いたカシウスの中で、何かが決定的に壊れた。  彼は「勇者」という仮面を捨て、「修羅」へと堕ちる。 「俺は変わる。……誰も俺たちから奪えないよう、すべての理不尽をねじ伏せる」  それは、愛する者を取り戻すためなら、国一つを滅ぼすことも厭わない復讐者の誕生だった。  かつてのユスティナと同じように、レギス王国に人質に取られた娘も闘技大会の景品にされた。  カシウスは娘を取り返すため、覆面剣士として敵国レギスの闘技場に潜り込み、敵将グリフォンと対決するも、そこには卑劣な罠が仕掛けられており、カシウスは自分の命を守るため、撤退せざるを得なかった。  その後、レギス王国がアウグストゥス王国に攻め込んできた。  好機到来と、カシウスは再び敵将グリフォンと相まみえる。  しかし、グリフォンはアイリスを人質に取っており、手を出せないカシウスは再び撤退を余儀なくされる。  絶対絶命の窮地に陥った夫を救うため、一度は守られるだけの存在だったユスティナもまた立ち上がる。 「私の命を懸けて産んだ子です。……母の愛を、甘く見ないでください」  彼女はかつて「景品」と蔑まれた美貌と気品を武器に、敵将グリフォンを誘惑して油断させ、背後から放たれた矢でグリフォンを討ち取ることに貢献する。  これは、国を失った姫と、何者でもなかった奴隷が、互いだけをよすがに世界へ反逆する物語。  幾多の血と涙を超え、二人が真の「王」と「王妃」として玉座に座るまでを描く、壮大なる愛の叙事詩。  ――これからは、この国ごと君を溺愛してやる。  鉄壁の愛で結ばれた最強の夫婦が、瓦礫の中から未来を築き上げていく、極上のハッピーエンドがここに。

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カクヨム
カクヨム2025/11/22
  • 現在の作品奴隷姫は勇者に溺愛されます