あらすじ
妻を亡くして以来、父・田中と高校生の娘・七海は、同じ家に暮らしながらまともに言葉を交わせないでいた。そんな折、会社の産業医・佐伯から治療のため「嘘しか書いてはいけない交換日記」を娘と交わせと命じられる。
嘘から始まり、やがて亡き妻への話へと踏み込んでいく。
――『お母さんのラザニアの味、もう忘れた』
娘の一対の熱が、固まった蝋を静かに溶かし始める。
日記を通してしか語れない感情と、語らないまま共に過ごす食卓。妻の命日、二人で焼くラザニアの匂い。
これは、嘘からしか始められなかった、父と娘のささやかな再生の物語。