あらすじ

世界規模のクラッキングにより、多くの国家が一時的な機能停止に陥った<世界が息を止めた日>から10年後——。  地球の衛星軌道圏や月面で、大国・企業間の開発・資源競争が激化する時代。地上では気候変動下の動物の行動変容を引き金に発生した新興病原菌が猖獗(しょうけつ)を極め、電子ネットワーク上では悪性機械知<マルボット>を無尽蔵に産出するデュプリケーターが氾濫していた。人間社会は電子領域における関係性防疫網<信頼連鎖>を作り上げ、これらに対する防壁とする。一方、その鎖は、人種や貧富をもとにしたものだけでなく、Cogentに代表される機能知性や、オートメーションの波によって露わになった<新しい知性>による格差をも助長し、固定化していった。  エノワール・ツァンは故郷アジアの情勢不安から逃れるようにして、ヨーロッパの国境・辺境の街<交差路>に移住する。学生生活のかたわら、余暇を使って仮想空間<模擬境界(シミュラレルム)>上の演目(プログラム)に参加していた彼女は、同年代の女性サリアと出会う。サリアに誘われ、<半民主義(デミクラシー)>や<人権人知再解釈運動>の筆頭とされる若者中心の結社<思惟党>の午餐会に参加した彼女は、大規模なクラッキングに巻き込まれる。その攻撃主は、彼女と同じ鎖に繋がれた人々に、こう告げる—— 「人類から格差の種根を取り除き、世界に真の平衡をもたらすことに賛同しますか?」

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2025/11/22
  • 現在の作品交叉路物語 Des langues croisées