あらすじ
神城梨央は、ある朝突然すべてを奪われた。
離婚届は自分が見る前に受理され、銀行口座は凍結、SNSアカウントは削除、病院の記録まで消去された。十年間連れ添った夫・蓮からの一方的な通告。それは、彼女の存在そのものを"なかったこと"にする宣告だった。
実家にも拒絶され、所持金三万円でネットカフェ暮らしを始めた梨央は、ふと思い立って精神科の診療記録を請求する。そこで知った衝撃の事実――結婚直後から三年間、夫の指示で抗不安薬と感情抑制剤を投与され続けていたこと。診断理由には「妻は感情的で家庭を破壊する傾向がある」と記されていた。
だが、梨央は十年間、一度も怒らなかった。薬が、それを許さなかったから。
友人との連絡は偽装メールで遮断され、SNS投稿はAIが代行し、彼女の人格は計画的に「消去」されていた。神城家には「妻改造マニュアル」が存在し、妻は跡継ぎを産むための「容器」として管理されていたのだ。
梨央は決意した。奪われた十年を、全て取り戻す。