あらすじ
【外面は冷徹、内面は限界オタク!? 聞こえるはずのない「心の絶叫」に振り回される、すれ違い(?)新婚ラブコメディ!】
北の大国を統べる皇帝・ヴィクトル。彼は敵国を一夜にして氷漬けにした伝説を持ち、その冷酷さと無表情さから「氷の皇帝」と恐れられていた。
そんな彼のもとへ、敗戦国の身代わりとして政略結婚で嫁ぐことになった不遇の王女・リリアナ。
初夜の寝室、ヴィクトルは氷のような瞳でリリアナを見下ろし、冷たく言い放つ。
「勘違いするな。余が貴様を愛することなど、未来永劫あり得ない」
処刑か、あるいは幽閉か。リリアナが覚悟を決めたその瞬間――彼女の脳内に、とてつもない大音量の『声』が響き渡った。
『うわああぁぁぁ! 本物だ! 天使がいる! 息してる! 尊い! 無理! 好き!!! 今日という日に感謝! 神よ、余をこの場に立たせてくれてありがとう!!』
――は?
実はリリアナには、代々王族に伝わる「他人の心の声が聞こえる」という秘密の力があったのだ。
目の前の皇帝は、能面のような無表情を貫いている。しかし、リリアナの脳内には『緊張で心臓が痛い』『あまりに可愛すぎて直視できない』『どうしよう、今の言い方怖かったかな? 嫌われたら死ぬ』という、威厳ゼロのヘタレな本音が垂れ流されていた。
「氷の皇帝」の正体は、恋愛経験ゼロでコミュニケーション能力が壊滅しているだけの、ただの不器用な青年だったのだ。
そうとは知らない周囲が「陛下がお怒りだ!」と震え上がる中、リリアナだけは彼のアタフタした内心を聞き続け、次第に恐怖心など微塵もなくなり、むしろ「生温かい目」で夫を観察するようになる。
ある日の庭園散歩中、無言でスタスタと歩くヴィクトル。しかしリリアナには聞こえていた。
『手をつなぎたい手をつなぎたい手をつなぎたい……でも手汗が気になったらどうしよう、いや、そもそも許可なく触れたら不敬罪か? いや余が皇帝だから不敬ではないが、嫌がられたら立ち直れない……よし、あと百回シミュレーションしてから……』
あまりの煩さと進歩のなさに、ついにリリアナの我慢が限界を突破する。
彼女はため息交じりに、冷徹(なフリをしている)皇帝の手をガシッと掴んで言い放った。
「陛下。『手をつなぎたい』と心で百回唱える前に、一度でいいから口に出して言ってみてください。……聞こえてますよ、全部」
これは、外面完璧・内面残念な皇帝と、全て筒抜けの妻が織りなす、世界一騒がしい物語。