あらすじ
冬の夜、無名の短編作家「私」は、読者から届いた一通のメールをきっかけに、自分の書いた一作が匿名掲示板で話題になっていることを知る。褒め言葉とともに付けられた謎めいた一行「夜の舟を探している」という書き込みが、彼の過去の欠落──幼い日の記憶と家族の断片──を掘り起こす。作者としての評価と匿名の反応が交差する中で、「私」は書くことでしか触れられない他者と直接出会おうと決意する。やがて友人からの再会、掲示板の常連とのやり取り、そして夜に漂う「小さな舟」を巡る連作的な短編群へと物語は拡大していく。