あらすじ
街の外れに、奇妙なカフェがある。
店名は「クロノ」。そこでは、コーヒーを一杯飲むたびに“数分だけ過去に戻れる”という噂があった。
会社員の春樹は、ある日ふとその店を訪れる。
店長の女性・クロエは、穏やかな笑みを浮かべる不思議な人物で、
彼女の差し出した「特製クロノブレンド」を飲んだ瞬間、春樹は5分前の世界に戻ってしまう。
驚きながらも、その力を使って“ちょっとした後悔”をやり直す日々が始まった。
だが、春樹はそのうち気づく。
毎回カフェで出会う一人の女性客――紗月――が、微妙に違う時間軸の「同じ人」だということに。
ある時は学生、ある時は画家、ある時は老人。
時代も記憶も違うのに、彼女の笑顔と仕草だけは変わらない。
「あなたに、また会えた気がする。」
その言葉に、春樹の心は揺れる。
クロエ店長は言う。
「この店に来る人は皆、“未練”を抱えているの。あなたと彼女も、時の狭間で出会う運命なのよ。」
春樹は少しずつ、彼女が何度も転生している存在であり、
彼自身が“その魂を追いかけ続ける者”だと知る。
彼は、幾千もの時を越えてもなお、同じ人に恋をしていたのだ。
――それは、過去でも未来でもなく、「この瞬間」を愛する物語。