あらすじ
度重なる転職失敗により、激しい被害妄想に囚われる主人公。不採用通知は元女上司の嘲笑の幻聴となり、部屋の壁や影すべてが自分を監視し、支配しているという関係妄想を募らせる。
彼は、人生の破綻のすべてがあの女上司の周到な陰謀であると確信。世間の常識を否定し、「俺が思ったことはすべて正しい」という独自の論理を数学的公理として絶対化する。彼は、自身の狂気を宇宙の法則やπの歪みと結びつけ、その妄想を強固な真実へと昇華させる。
その論理の終着点は、「あの女を殺すためには、俺が消えればいい」という破滅的な結論だった。彼の死は、あの女の世界を崩壊させる演算不能なエラー(虚数単位の復讐)であり、宇宙の均衡を取り戻す唯一の手段だと確信する。
幻視と幻聴に導かれネクタイを手に取った主人公は、「俺は正しい」という最後の言葉を記し、自らの絶対的な論理を証明するために行動を開始する。