あらすじ
回復術師のアルトは、神からのギフトとして「完全蘇生」という奇跡のスキルを授かった。死者を無条件で蘇らせるその力により、彼のパーティは死の淵から何度でも生還し、英雄として称賛を浴びていく。どんな致命傷も、どんな不運な死も、アルトの祈り一つで帳消しにできた。彼にとって、それは仲間を守り抜くための最高の希望だった。
だが、この世界に無償の奇跡など存在しない。アルトがスキルを行使するたび、その代償として「彼が心から愛する人間」が世界から一人ずつ消滅していたのだ。それは死ではなく、存在そのものの消失。記憶からも記録からも消え失せ、最初からいなかったことになる呪い。しかし、アルトはその残酷な法則を知らない。仲間を救いたい一心で、彼は無邪気にも禁断の力を振るい続ける。
幼馴染、恩師、そして密かに想いを寄せていた少女。仲間を死の淵から救い上げるたび、アルトの大切な人々が誰にも気づかれることなく世界からこぼれ落ちていく。違和感は積み重なるが、目の前の命を救う使命感が彼を盲目にさせていた。
そして、パーティの最後の一人が倒れた時、アルトは迷わずスキルを発動する。その蘇生が、自分を愛してくれた最後の人間を消し去り、真の孤独をもたらす引き金になるとも知らずに。これは、優しすぎた少年が歩んだ、あまりにも残酷で悲しい救済の物語。