あらすじ
20世紀後半、韓国の片隅でひっそりと誕生したキリスト教系カルト団体「共栄教会」。その中心に立つ謎めいた指導者イ・キュインは、自らを「聖約者」「救世真皇」と称し、神の代理人であると宣言した。彼は弱者に寄り添うという甘美な語り口に成功者への憎悪を正当化する歪んだ教義を織り交ぜ、人々の孤独と不安につけ込んでいく。
この奇妙な教えは瞬く間に広がり、韓国国内を超えて中国をはじめアジア各国へと波及する。日本でも水面下で信者を急増させ、社会の各層に浸透した共栄教会は、国力の低下に逆行するように勢力を拡大。ついには政界へと触手を伸ばし、「共栄党」を結成する。
時代は2030年代後半。極東から米軍が撤退し、朝鮮半島では北朝鮮が後ろ盾を失った韓国を呑み込み統一国家「高麗連邦」が成立。地政学が激変する中、2041年の富士山噴火を契機に、日本の政権は大きく揺らぎ、ついに共栄党へ政権が明け渡される。
だが、その先に待っていたのは救済ではなかった。高麗連邦、中国、ロシアの後押しを得た共栄党政権は、ゆっくりと、しかし確実に独裁へと傾いていく。そして2045年2月11日――国会周辺や皇居前を埋め尽くした反政府デモに対し、政権は武力による弾圧を敢行。「血の建国記念日」と呼ばれる惨劇を境に、日本は未曾有の暗闇に包まれてゆく。