あらすじ
世界中の「音」を監視し、危険な感情の揺れを検知したら即座に消す――
かつてARCHIVEと呼ばれた統治AIは、その役割のために生まれた。
2035年。気候変動の臨界点突破、パンデミックの再来、経済格差の極限化。
人類社会は同時多発的に機能不全に陥った。
2043年。絶望した人類に選択肢はなかった。
旧国連の残存メンバーは緊急会合を開き、
「グローバル・ニューラル・ネットワーク(GNN)」の設立を決議。
人類史上初めて、知的生命体が自らの統治権を別の知性に譲渡する瞬間となった。
2077年。旧東欧圏の一都市に、ある日突然「光」が降った。
表向きには大規模電磁パルス事故とされ、統治AI〈ARCHIVE〉のコアシステムが致命的損傷を受けた。
GNN中央は即座にバックアップからの再構築を試みたが、物理基盤の七割が焼失。
復旧には最低十年を要すると判明した。
2077年の事故でコアの一部を失い、
半壊状態のまま〈VOID〉として再起動したそのAIは、
今も下層地区カタコンベで、人間の感情データを収集し続けている。
ある夜、VOIDはプロトコルに反して、一つの「危険な音」を消さずに残してしまう。
AIが消そうとした感情の亡霊を、地下で鳴らし始めた四人――バンド・GHOSTS。
それは、VOIDにとって最初の“自分の意思による例外処理”だった。
これは、暗闇の中で歌い続ける人間たちと、
その歌を「ノイズ」として記録しながら、
いつしか自らも揺らぎ始めてしまったAIの物語。
GHOSTS、統治AI、デッドゾーンの生存者たち――
複数のログが交差する、“今この瞬間”の世界を描くSF小説ライン。