あらすじ
台風の夜、土田耕平は軽トラックごと鉄砲水に呑まれた。
27歳、農業一筋。派手さはないが、土と共に生きてきた男だ。
目を開けると、そこは「レイト村」と呼ばれる寒村だった。
見慣れない服、聞いたことのない言語、そして空気に混じる「魔素」。
異世界転生――そう認めざるを得ない状況の中で、彼が手にした力は一つ。
土壌の栄養、魔素の濃度、色元素の偏り、pH……
大地の状態が、視覚と触覚で具体的な情報としてわかる
「農の理」という異能。
戦闘特化のチートもなければ、勇者の称号もない。
あるのは、現代農業の知識と、現場叩き上げの感覚だけ。
それでも――
「畑さえちゃんと回れば、人は生きられる。」
レイト村の立て直しから始まった小さな改革は、
やがて帝国全土の農政、流通、市場構造へと波及していく。
飢饉に苦しむ隣国・神聖黄金国。
異端を焼き続けてきた一指聖教の教え。
亜人たちを“堕ちた指”と蔑む神話構造。
ツチダの「理」は、
そのすべてに「本当にそれでいいのか?」と問いを突きつけていく。
大地を耕し、制度を耕し、人の心と神話を耕し直す。
農業内政ファンタジーであり、宗教戦争譚であり、
「理とは何か」を巡る群像劇。
畑の一列が変われば、村の冬越しが変わる。
村が変われば、国の戦略が変わる。
国が変われば、神話さえも書き換わる。
――これは、小さな畑から始まる世界再生の物語。