あらすじ
フリーラーライターをしながら河童の研究をしている二十六歳の小手川由里香(こてがわゆりか)は、かつてその地に河童信仰があった事を知り調査に乗り出した。
大阪府某所にある「メゾンホワイト」は、水難事故や入居者の失踪が相次ぐ曰く付きのマンションであった。
「304号室」に入居した小手川は部屋に残された机から「二冊の日記」を発見する。
それはかつてこの地に住み、「河童」に翻弄された住人たちの残した奇妙な記録であった。
荒唐無稽な怪文書を軽視していた小手川だが、次第に明らかになってきたこの地の歴史に、日記の内容が虚妄ではなく、おぞましい歴史の追体験をしていた事がわかってきた。
小手川は「片寄大輝(かたよせだいき)の日記」と「梅田郁弥(うめだふみや)の調査記録」を手に、この地で目撃される「河童」の影を追うが、次第に怪しい信仰団体「水胎回帰信仰会」や「杉沢集落の河童伝説」に記された「恩田」の一族の存在が明らかになってくる。
この地に残されたと言う「呪いの箱」。怪しい信仰団体が祀る河童の変異した「イキセ様」の正体。
「呪い」は「河童」は実在するのか――
「水」に満たされた「箱」の中で、小手川由里香は最期に何を見るのか……。
〈登場人物〉
・『小手川 由里香』 (こてがわ ゆりか) 二十六歳
猫の様な面立ちをしている。化粧っ気がなく痩せている。白い肌、黒い髪。
大学生時代、学会の研究発表で夢破れたが、「河童」への愛が止まず、フリーラーターをしながら「河童」の研究を続けている。いつか学会誌に論文を掲載する事を夢見ている。
・『片寄 大輝』(かたよせ だいき) 二十二歳
コンビニでアルバイトをしていた「304号室」一人目の住人。
霊媒体質。
二〇二五年十一月に同室浴槽内で溺死。
・『梅田 郁弥』(うめだ ふみや) 三十二歳
本職で看護師をしながら怪談師をしている。ネタになると思い、曰く付きマンションへ入居する。
「片寄大輝の日記」を元にこの地であった出来事を解き明かそうとしていた。
二〇二九年七月、記録に奇妙な記述を残して行方不明となる。
・『早瀬 恵美子』(はやせ えみこ) 五十六歳
「メゾンホワイト」元管理人
二〇二八年二月に肺水腫で息を引き取る。
・『早瀬 文夫』 (はやせ ふみお) 六十二歳
恵美子の夫。
二〇二四年以前に行方不明。
・『早瀬 翔太』 (はやせしょうた) 九歳
文夫の連れ子。
二〇二四年に「メゾンホワイト」屋上の給水タンクへ転落して溺死。
・『早瀬 すず』 (はやせ すず) 六歳
翔太の妹。
二〇二四年に行方不明。
・『早瀬 きよ』 (はやせ きよ) 七十一歳
文夫の母。
二〇二二年奈良の湖に沈没した車内に残されたスーツケースの中に遺棄。
・『對馬 眞子』 (つしままこ) 六十二歳
「メゾンホワイト」現大家。
・『恩田 兼光』 (おんだ かねみつ) 八十四歳
「杉沢集落の河童伝説」で「河童の腕」を保管したとされている「恩田」の一族の末裔。
〈杉沢集落〉
「くろんど山」の山間にあった集落。四十年前のバブル期に「地上げ屋」の過激な立ち退きにあい廃村となる。集落内には「桜田川」という清らかな小川が流れ、その地には「河童伝説」があった。
〈水胎回帰信仰会〉
「水に生まれ水に帰る」という教義を元に、桜田川におわす「河童」を「イキセ様」と呼んで信仰していた新興宗教。