あらすじ
月がよく見える日だった。
足元には、体の半分が消えた男女の死体。
そして周りには、怯えた顔で武器を構える大人たち。
空気の澄んだ、気持ちの良い日だった。
覚えているのはそのくらいで、詳しいことは何も思い出せない。
けれど、きっと探せば見つかるのだろう。
探すのが怖くて、目を逸らし続けているだけで。
僕はあの日、過ちを犯してしまった。
その事実が変わらないのなら、もう思い出す必要もない。
「兄さん? 聞いてる?」
「え、ああ…えっと、何の話?」
「もう、いい話だったのに…」
「ごめんごめん。もう一回言って?」
「嫌だ。二度は言いたくない」
「えー…僕も聞きたかったなあ」
「聞いてない兄さんが悪い」
「うっ…その通りだね…」
「ふふっ、仲が良くて微笑ましいわ」
「あはは、本当に」
──────これは、死ねない僕の〝償い〟の物語。