あらすじ
泣きたかった。
今すぐにこの場所から逃げ出して、自室のベッドに潜り込み、分厚い布団で頭まで包まって、誰とも会わずに三日間くらい過ごしたい。
魔王城、最上階「謁見の間」。
薄暗く、黒と赤を基調としたインテリアは、あまりにも圧迫感が強すぎた。
私は、魔王ヴォルクスとして、その禍々しい玉座にちょこんと座っていた。
(……空気が、重い)
私は膝の上で、微かに震える指先をマントの下に隠した。
目の前には、数百の魔物たち。
彼らの視線が痛い。物理的に刺さっている気がする。
彼らは私に「絶対的な悪」を期待している。その期待という名のプレッシャーが、INFPである私の繊細な胃壁を容赦なく削り取っていく。
怖い。みんな顔が怖いよ。
あそこのゴブリン、牙がギザギザだし。リザードマンの鱗、触ったら絶対痛いし。
なんで私は魔王なんてやっているんだろう。私の適職診断の結果は「図書館司書」か「詩人」だったはずなのに。
「魔王ヴォルクス様ァァッ!!」