あらすじ
対人関係に臆する村野 夏樹(26)が、孤独という名の自由を求めてパリに渡ったのは半年前のこと。他人と関わりを持たずに生きていく道を模索していた彼は、やがて作家を目指すようになる。日本での日常のしがらみから避難した夏樹であったが、しかし、彼が身を置くパリもまた人間社会の中に存在する一つの街である。過去に人間不信の例を幾度となく目にしてきた夏樹は、やはりパリでも同様の問題と直面することになってしまう。
芸術家のロキ、その友人のヴィンセント、そして、語学学校の日本語講師である福島 沙織と出会った夏樹は、やがて彼の最も恐れていた嘘と裏切りによって、さらに他人に対する警戒を強めていく。人間に対する不信を極限にまで募らせた挙げ句の果て、夏樹は麻薬に手を出してしまう。人道を踏み外しかけていた夏樹を救ったのは彼の母親と、彼女に瓜二つな沙織であった。この世で唯一愛を感じることのできる二人の女性に縋ることで、夏樹は今一度人間社会への復帰を試みる。
ようやく自分以外の人間に対する恐怖を乗り越えたかに見えた夏樹であったが、今度は自分のいう人間の存在意義に迷いを抱くようになってしまう。そして、そんな自分の存在価値を見失いかけていた彼の元に届いたのは。。。
人に生まれ、人間社会の中で他人と共に生きていかねばならぬにも関わらず、その義務を放棄した夏樹に残されたもの。それは孤独という名の罪であり、そして同時にそれは罰でもあった。