あらすじ
——日本が、沈む。
航空自衛隊の救難ヘリパイロット・神谷迅、32歳。
8年前の大津波で家族全員を失った。母からの最後の電話にさえ、出られなかった。
あの日から関われた誰かを救い続けることで、過去の借りを返そうとしている。
何百人助けても、消えない罪がある。それでも、飛ぶことだけが自分に残された意味だと信じていた。
ある日、駿河湾上空で異変を目にする。
海底から噴き出す無数の気泡。沸騰するように泡立つ海面。
「プレート境界が、滑り始めています」
同乗していた地震学者の女は、震える声でそう告げた。
一ヶ月以内に巨大地震が起きる確率——30%。
だが政治は動かない。「70%は起きないんでしょう?」と。
確率は40%、50%、60%と跳ね上がり——
やがて、日本列島は静かに崩壊を始める。
地震を予測する科学者。
避難計画を握る官僚。
故郷を離れられない幼馴染。
海外脱出の窓口となる元キャビンアテンダント。
四人の女性たちと、一人の男。
沈みゆく国で、それぞれの「生きる理由」を問われていく。
「何人死んだら動くんだ」
「最小の死で済む判断が、私の仕事よ」
「私、この町で死んでもいい」
「——で、あなたはどうするの?」
誰を救い、誰を見送るのか。
どこで生き、どこで終わるのか。
これは、すべてを失う前提で「それでも」を選び続ける、終末の恋と再生の物語。