あらすじ
一年中、鉛色の霧に閉ざされた港湾都市「ミスト・ヘイヴン」。
警察が腐敗し、暴力が蔓延るこの街の路地裏に、『失われた時間(ロスト・タイム)』という名の古時計店がある。
店主のヴィクターは、時計修理職人。
「美しい犯罪は芸術だが、杜撰(ずさん)な犯罪は公害だ」
彼は手を汚さない。彼が作るのは、偶然を装った“死のピタゴラスイッチ”。裏社会の「犯罪のコンサルタント」だ。
依頼人はただ、彼が書いた脚本通りに動くだけで、憎い相手を葬り去ることができる。
証拠も、動機さえも、すべては霧の中へ消えるはずだった――。
しかし、ヴィクターの描く完璧な設計図に、たった一つ、計算外のノイズが混じる。
それは、盲目の女性刑事・セレナ。
光を失った代わりに、嘘の周波数とトリックの軋(きし)みを嗅ぎ分ける“神の耳”を持つ彼女だけが、完全犯罪の裏で回る「歯車の音」に気づいてしまう。
冷徹な犯罪脚本家 vs 凄腕の盲目刑事。
霧深き街を舞台に、美学と正義が交錯する、ピカレスク・ミステリー。
その鐘が鳴る時、裁かれるのは「悪」か、それとも――。