あらすじ
バス、タクシー、夜行便――。
ありふれた移動の時間に、ささやかな「事件」が起きる。
座席の下で光る透明な欠片。
アルバムから抜かれたままの写真。
「迎え 21:30」とだけ書かれたメモ。
消しゴムで消された名前の跡。
落とし物、勘違い、事務ミス。
その場ではすべて「よくあること」として処理され、
小さな騒ぎは、いつもその日のうちに片づいていく。
けれど、その破片たちは、どこかで一つにつながっていた。
かつて四人家族だったはずの家。
兄が関わった“あの日の出来事”。
父と母が選び直した「三人」という形。
そして、嘘の記憶を本当だと信じてしまった弟――語り手。
誰にも拾われなかった写真、
名乗り出られない名札、
ポケットにいつの間にか紛れ込む透明な欠片。
百の小さな「落とし物」が、
ひとつの家族の真実を浮かび上がらせていく。