あらすじ
かつて高度な文明社会の裏側で、幾多の欺瞞を重ねて死んだ男がいた。 彼が再び目覚めた地は、大陸の南端に広がる未開の密林地帯、アズラ地方。通称「ナラク」。 文明の理(ことわり)が及ばず、泥と湿気、そして原始的な暴力のみが支配するこの地で、彼は小部族の少年ルオとして二度目の生を歩み始める。
魔法も奇跡も存在しない過酷な自然の中で、ルオが望んだのは目立たぬ平穏な日々だった。 だが、彼には人知れず宿った異能があった。 一日一回、口にした出鱈目を強制的に真実へと変える絶対的な『虚言』。 そして、前世で培った冷徹な知略と観察眼である。
折しも、世界は群雄割拠の乱世。 遠くから響く戦火の足音は、やがてこの辺境の森をも飲み込み、彼から平穏を奪い去ろうとしていた。 抗う術を持たぬ部族の中で、元詐欺師の少年は決断する。 牙も爪も持たぬ自分が生き残るために、封印していた「嘘」を再び武器にすることを。
これは、たった一つの虚構で理不尽な現実を覆す、ある嘘つきの戦記。