あらすじ
恋愛感情を持てないアロマンティックであることを理由に、周囲から「冷たい」「変な子」と敬遠されてきた女子高校生・アキナ。自分ではどうにもならない特性なのに、理解されない苦しさだけが静かに積み重なっていた。そんなある日、アキナは突然の光に包まれ、感情が魔力の源となる異世界エセルフィアのアーディン王国へと転移してしまう。
この世界ではあらゆる魔法が感情を燃料として発動する。怒りは炎に、悲しみは水に、そして恋愛感情は特に強力で、最強の魔法を生むとされていた。しかし同時に、強い感情は暴走を招き、破壊を生む危険な力でもあった。アキナが学園で検査を受けると、恋愛感情を持たない彼女は感情の揺れ幅が極端に小さく、逆に「純度の高い安定した魔力」を扱える極めて稀な存在だと判明する。
そんなアキナに告げられた使命は、世界を滅ぼそうとする“魔王”の討伐だった。
魔王はかつて人間でありながら、感情魔法によって大切なものを失い、感情の暴走で崩壊していく世界に絶望し、自ら世界の破壊者として君臨しているという。感情を持つ限り争いは繰り返される――魔王はその絶望から「すべてを終わらせる」ことこそ救いだと考えていた。
アキナは帰る手段を求め、討伐隊に参加するものの、強い感情を持つ仲間たちとは価値観が合わず度々衝突する。恋愛感情を力に変える仲間の気持ちが理解できず、共感を求められても応じられない。それでも戦いの場では、感情の揺れで魔力制御を失う仲間たちに対し、アキナだけが冷静に魔力を使いこなし、次第に「討伐隊の要」として信頼を得ていく。
そしてついに魔王城に辿り着いたアキナは、世界の憎悪を背負ったような魔王と対峙する。魔王はアキナの“揺れない心”を見て嘲笑しながらも、どこか救いを求めるように語りかける。「感情は人を狂わせ、争わせ、奪い合い、やがて世界を滅ぼす。ならば私が先に終わらせよう」と。
アキナはその言葉が、過去に自分が感じていた孤独や疎外感と重なってしまう。しかし、周囲と合わなくても、自分が欠けていると感じても、それでも世界を壊す理由にはならないと気づく。世界が苦しんでいるなら、壊すのではなく変える道だってあると。
自分の心を責め続けてきた少女が、絶望を選んだ魔王に立ち向かう。
――感情に支配される世界で、恋をしない少女だけが示せる“破滅を止める答え”とは。