あらすじ
日本史に、源義経は死んだ。
だが世界史は、その男の名をまだ知らなかった。
壇ノ浦の戦いののち、
都にも、鎌倉にも、奥州にも、居場所を失ったひとりの武将が、
北の果てへと姿を消す。
剣を捨て、名を捨て、
国を捨てて辿り着いたのは、果てしない草原――
そこは、生きるために戦う者だけが許される世界だった。
異邦の男は、
蒼き狼と呼ばれ、弓と馬を手に戦場を駆ける。
裏切りを知り、孤独を知りながら、
それでも仲間を守るため、誰よりも前へ出た。
やがて部族は統合され、
名もなき男は、大陸を震わせる王へと変わる。
人は彼を、チンギス=ハーン と呼ぶ。
だが、その名が歴史に刻まれたとき――
源義経は、すでにどこにも存在しなかった。
英雄とは何か。
名を遺す者か、
名を捨ててなお生き続けた者か。
『蒼き狼は、名を捨てた』
それは、
孤独な英雄が
世界の覇者へと生まれ変わるまでの、
孤独と再生の物語。