あらすじ
来秋、ハルは結婚する。相手は穏やかで誠実な男、チアキ。
誰もが祝福するはずの未来を前に、幼なじみの美里だけが微笑めずにいた。
長い年月を共に過ごしたのに、ハルの「これから」に自分の居場所はない。
その現実が、美里の中の何かを静かに軋ませた。
美里はチアキに近づく。恋ではない。ただの手段。
言葉を選び、涙を計算し、彼の心に小さな亀裂を作る。
美里は初めて安堵した――ハルを孤独に戻せる、と。
ハルは知らぬまま、日常の端に奇妙な影を見るようになる。
笑顔の奥に、微かなざらつき。言葉の裏に、誰かの息づかい。
信頼は薄氷のようにひび割れ、愛は形を変えて腐っていく。
美里はそれを見届けながら、心の奥で呟く。
――ハル、私がいる。ずっとそばにいる。誰よりも。
その祈りにも似た声が、やがて呪いに変わることを、彼女はまだ知らない。