あらすじ
戦う能力こそが価値とされる異世界。
十八歳で大人と認められ、人は炎を操り、剣を振るい、その力で生きていく。
田舎の貧しい家庭に生まれた少年トールも、能力に夢を託した一人だった。
しかし彼に発現したのは、剣も魔法も使えない──触れた人や物の感情を読み取るだけの力。
役に立たないと蔑まれ、冒険者の道を断たれ、商業ギルドの雑用で日々をつなぐ。
失われた命、老いて忘れられていく心、誰にも届かない想い。
それらに触れるたび、少年は問い続ける。
──自分は、この世界で生きていていいのだろうか。
そんなある日、夕焼けの丘で起きた“異変”をきっかけに、
トールはこの世界とはまったく価値観の違う世界へと辿り着く。
戦えなくても、生きる意味はあるのか。
感情を知ることしかできない少年が、二つの世界で見つけていく、
静かで優しい生き方の物語。