あらすじ
――ん……ここは……ば、馬鹿な……!
目を開けた男は、しばし状況を理解できずにいた。ぼんやりと霞んだ意識が少しずつ鮮明になっていく。いや、そうならざるを得なかった。
そこは暗く細い一本道。両脇には底の見えぬ奈落が大口を開け、燃え盛る炎の轟音と亡者たちの嘆きが渦巻いていた。鼻を刺す悪臭が漂い、見上げても空はなく、広がるのは果てしない漆黒。赤々と揺れる篝火が、そこに存在する唯一の光であった。
そして前方には巨大な門。その扉が今、ぎぎぎと忌まわしい音を立てながらゆっくりと開き始めた。熱気と、生臭い風が吹き抜ける。
男が立つこの場所は――。
「地獄……? な、なぜ、この私が地獄などに……!」