あらすじ
ミステリーのトリックとして好まれる、「二重人格」あるいは「多重人格」。
正式には、「解離性同一性障害」という。
現実の彼ら、彼女らは、他人を思いやる気持ちの強い、とても優しい心を持つ。
そう、他人よりも、自分を切り刻むことを選んでしまうほどに。
人格交代という、この病の極めて特殊な症状から、古くより奇異の目で見られ、小説では犯罪者として描かれることが多い。
当然のことながら、彼ら、彼女らは、すき好んで別人格を生み出したわけではない。
新しい人格を生み出すとき。
堪え難い苦痛から逃れるために、苦痛を感じる自分の一部をパージする瞬間。
どれほどの絶望と、苦しみの中にいたのだろうか。
誰も、幼い彼ら、彼女らを助けてくれなかった。
だから、幼い彼ら、彼女らは、たった独りで立ち向かうしかなかった。
まともな心を保つには、痛みそのものを切り離してしまう以外、方法がなかった。
2つどころか、3つ、4つと粉々に砕けてしまった彼ら、彼女らの心を元の1つに戻すには、とても根気と時間が必要です。
彼らを題材にした作品がエンターテイメントとして人気を博すたびに、私は心を痛めてきました。
今回、このテーマで作品を発表することは、正直迷いました。10年くらい迷いました。
私自身は関係者ではあっても患者本人ではないので、偽善では、エゴではないかとも思いました。
だからこれまでは、テーマを明らかにせずにときどき彼ら、彼女らの詩を書いていました。
それでも、小さなこの場所で構わないから、一人でも多くの方に彼ら、彼女らの壮絶な闘いを知ってもらいたいと思い、発表する決意をしました。
この作品は、これまで書いてきた彼ら、彼女らの詩を、なるべく時系列で並べ直しています。
今後、新しい詩も時系列に合わせた場所に追加していく予定です。
小説のトリックとして「犯人」の二重人格、多重人格が安易に選択されない世の中が来ることを願っています。