あらすじ

未来の日本。 医学とAIが発達し、人間は簡単に死なず、必要なら辛い記憶すら消せる世界になっていた。 75歳の黒崎想太も、延命処置によってなお生き続けている一人だった。 環境は整っている。 身体も健康だ。 痛みも、苦しみも、悲しみもほとんどない――はずだった。 けれど、彼の心にはずっと“空白”があった。 思い出せない誰かの笑い声。 夏の匂い。 胸を締め付ける感覚。 そんなある日、「記憶再帰装置《タイムマシン》」の被験者募集の通知が届く。 それは過去に戻る機械ではなく、消された記憶を追体験する装置だった。 装置に意識を委ねた彼は、17歳の夏へと戻る。 そこで出会う――忘れてしまっていた少女、花村玲。 二人は青春の中で笑い、言葉を重ね、そして想太は彼女に告白する。 しかし直後、玲は交通事故で命を落としてしまう。 痛みに耐えきれなかった少年の想太は、 自らの意思で彼女との記憶を消していた。 長い年月の後、再びそれを思い出した老人の想太は気づく。 「忘れることは生き延びること。 思い出すことは――生き直すことだ。」 過去は変わらない。 玲は戻らない。 けれど記憶は、再び彼の中で息を吹き返す。 痛みと共に未来へ歩き出す想太。 そして、届かないはずの場所から―― 玲の声は静かに囁く。 「生きて。 その痛みごと抱きしめて。 わたしは、あの日の夏にいる。」

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小説を読もう2025/12/08
  • 現在の作品タイムマシン(残響の夏)