あらすじ
「公務員だぞ。事務処理で結構だろ」
近未来、冷戦下の帝都。 降り止まぬ雨の中、国家の汚れ仕事を請け負う諜報機関「八咫烏《ヤタガラス》」の狗として、淡々と標的を「掃除」する男がいた。 その名は、霞川真《カスミガワ・マコト》。
彼の能力は『因果律の改竄』。 引き金を引くという「原因」と、弾丸が命中するという「結果」。その間に存在する物理的な「過程」を世界から省略し、回避不能の必中をもたらす異能。 だが、その代償として、彼は使うたびに自身の「人間としての感情」を欠落させていく。
ある日、マコトと相棒の氷川怜《ヒカワ・レイ》に下された勅命。 それは、社会の病巣を自称するテロ組織『免疫機構《イミュニティ》』の殲滅だった。
地下要塞で待ち受けていたのは、組織の首魁・布川善行《ヌノカワ・ゼンコウ》。 「距離を無限に分割する」彼の絶対防御を前に、マコトの因果律は届かない。
「平和という名の欺瞞を守るには、感情を持たない『装置』が必要だ」
善行が語る「必要悪」としてのテロリズム。 その狂った論理をへし折るため、マコトは自身の**「痛覚」と「恐怖」**を代償に捧げ、無限の彼方へ踏み込むことを決意する。
それは、一人の英雄が悪へと堕ち、新たな「怪物」が誕生するまでの、雨と銃声の物語。