あらすじ
子どもの頃、大切にしていたぬいぐるみやおもちゃって、ありませんか?
あの頃の時間がぎゅっと詰まっていて、懐かしい写真を見たとき、不意に胸があたたかくなる。
大人になると、私たちは時々、何かを見失ってしまいます。
けれど、思うのです。幼い頃の自分を支えてくれた小さな存在――あの頃の時間のすべて――は、決して消えてしまうわけではないのだと。
たとえ姿が変わっても、擦り切れた布の内側では、大切な記憶が息をしている、いつかあなたをそっと助けてくれる――そんな願いを込めた、小さな未来への手紙です。
私の息子はいつもハンバーガーに挟まれた猫のぬいぐるみを肌身離さず、いつも持ち歩いています。息子のぬいぐるみの名前はヒラちゃん。
ぬいぐるみは随分と擦り切れ、ところどころ糸がほつれています。けれど、その傷みには歳月の分だけ物語が宿っています。
もし、このまま10年も、20年も月日が過ぎて、未来のどこかで息子が迷ったとき、古びたヒラちゃんを手に取ったとき、幼い頃の記憶が息子の何かを呼び起こす時が来るかもしれません。
「この子と一緒に歩いてきた時間が、今の自分を作ってくれたんだ」
そんなふうに感じられたなら、それだけで十分なのだと思います。
これは、ヒラちゃんと息子の、もうひとつの物語でもあります。