あらすじ
私鉄○○線の公式路線図には存在しないのに、
乗り換えアプリとICカード履歴にだけ、ときどき顔を出す駅名――「空白駅(からのえき)」。
「そこに降りた記憶なんてないのに、履歴には“空白駅で一度下車”と残っている」
民俗系同人サークル「都市民俗フィールドノーツ」は、この不具合じみた噂をきっかけに調査を始める。
鉄道会社への問い合わせ、
実際の乗車と路線確認、
集まってくる“空白駅を見た”利用者たちの証言。
やがて浮かび上がってきたのは──
地図には描かれない、移動の途中だけに現れる「途中駅」の民俗と、
計画されては消えた“仮駅”の記憶が、現代のICカードシステムの中で絡まりあった姿だった。
終電間際、一瞬だけ点灯する「次は 空白駅」の表示。
A駅からB駅へ向かうあいだ、すっぽり抜け落ちた数分間の記憶。
そして、いつの間にか綺麗に消えている、
「本当はあったはずの過去」のノートやデータたち――。
**『空白駅(からのえき)調査報告』**は、
インタビュー、ログ、フィールドノート形式で綴られるモキュメンタリー風オカルト短編です。
血も絶叫も出てこない。
あるのは、「存在しない駅」のまわりに静かに積もっていく違和感と、
「もしかして自分も一度は降りているのではないか」という、じわりとした不穏さだけ。
あなたの乗車履歴にも、見覚えのない駅名が一つだけ紛れ込んでいないか──
読み終えたあと、ついICカードの履歴を開いてみたくなるタイプの“都市伝説モキュメンタリー”です。