あらすじ
世界はずっと前から、どこか壊れたままだった。
原因のわからない事故、頻発する災害、異常なまでの行方不明、誰かの口をついて出た不可解な噂達。
どこか遠くで起きる説明のつかない出来事を、人間は深く考えずに受け流して生きている。誰だって命が惜しいから。
かく言う俺も、そうやって暮らしていた。
──白星さんに出会うまでは。
四季折々の香りに包まれた、商店街の小さな花屋。閉店間際でも、店主の白星さんは変わらない声で「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。
俺は別に花が好きなわけじゃない。ただ、白星さんの語る“昔話”を聞きたくて足を運んでいた。
海に恋する患者さん。
いつの間にかそこにいたナニカ。
父親の残した日記帳。
夢と現実を揺蕩う水晶。
オチがある時もあれば、何かを隠すように黙る時もある。
だが、そのどれもが淡々と語られるには奇妙すぎて、現実に寄りすぎている。
白星さんは、自身がどれほど“異質なモノ”に好かれているか、たぶん知らない。
ソレがどれほど“おかしい”事かも、気付いていない。
──あるいは、気付かぬふりをしているだけなのか。
俺には、その“ズレ”がよくわかる。
俺だけが、ソレに気付いている。
聞き続ければ、いつか取り返しのつかないところまで行くだろう。
それでも俺は白星さんの元へ足を運び、白星さんを観察し続ける。
これはただの興味ではない。もっと厄介で、もっと手放しづらいものだ。
今日も、花香と狂気が、俺の日常を静かに侵食していく。
⚠クトゥルフ要素がありますが、知らないでも全然読めます。知ってたら「あ、これあれじゃね?」ってなるくらいの要素です。安心してお読みください
⚠多重投稿