あらすじ
小柄な体と公家らしからぬ活発さで「岩吉」と渾名された岩倉具視。黒船来航で危機に瀕する国のため公武合体を画策し奔走するが、岩倉を取り立てた孝明天皇にまで佐幕派と疑われ、辞官と出家を命じられる。粗末な住居で「無念切歯に絶えず」と日記に綴る日々。1865年、朝廷行事の裏方や雑務を担当する非蔵人・松尾相永(まつお・すけなが)が岩倉を訪問。松尾家は松尾神社の祠官で代々非蔵人を専業としていた。松尾はその後岩倉の手足となって情報収集し、連絡係を務める。岩倉は1865年秋に長文の意見書を薩摩藩や関白の二条斉敬(なりゆき)に送るが、黙殺された。9月16日、条約承認を求めて兵庫沖に現れた英仏蘭米四か国の艦隊。10月、孝明天皇が徳川慶喜に条約勅許を与えたことに岩倉は驚愕し、焦燥を深める。
そんなとき、松尾がとある情報を岩倉へもたらす。兵庫の養父(やぶ)の里で三百年続く古流漢方の医家、万願寺家には裏の顔がある。一子相伝の殺法を持ち歴史の転換期に重要な役割を担ってきたという。