あらすじ
海風の匂いがふわりと漂う夕暮れ。海辺の学園の丘に立つ王子寺(おうじでら)ユウは、校舎の窓から差し込む金色の光の中で、ひとり佇んでいた。
誰もが彼を「王子ちゃん」と呼ぶ。整った顔立ちと目立つ気遣いの良さのせいで、いつの間にかそう呼ばれるようになったのだ。
その日、転校生がやってきた。
白いカーディガンに薄桜色のリボン。春の気配をそのまま形にしたような少女。
名を、姫川さくら。
彼女が振り返った瞬間、風が二人の間をすり抜け、ユウの胸は不意に跳ねた。
恋なんて、面倒くさくて縁のないものだと思っていたのに。
それでも、気づいたら目で追っていた。
――王子ちゃんは、お姫様に恋をした。
でもその恋は、ただの甘い物語では終わらない。
さくらの秘密と、ユウの過去。
そして二人の運命が、学園の季節とともに動き始める。