あらすじ

~~~ Caféteria abcb 店内窓際3番テーブルにて ~~~ 「なあ、後輩」 「なんですか、先輩」 「この店の名前、なんて読むんだ?エービーシービー?」 「っふふ、そのままじゃないですか。これはね、アバカブって読むんです」 「アバカブ……abcbでアバカブねぇ。わかるようなわからんような」 「2週間前にオープンしたばっかりなんです、このお店」 「外観も内装も綺麗だもんな。それに落ち着いた雰囲気もいい。店の立地がちょっと通りから外れてるせいなのか、店の周りも内も静かだ。店内も広すぎず狭すぎず。客も少なめで、いや、これは店にとってはマイナスか。まあ、総じて良い喫茶店だ」 「お料理も美味しいんですよ。さっき注文したワッフルセットも間違いないですからね」 「だろうな。まさか後輩一人分で2品頼むとは思わなかったが」 「ブルーベリーとバナナ、どちらも捨て難かったので両方注文しましたけどソレガナニカ?いいんですー、先輩と半分こする前提なのでいいんですー」 「いいけどな。俺が注文してる分とで実質丸々2品食べることになるけどな」 「あ。先輩のアーモンドワッフル、一口分けてくださいね♪」 「ああ。まあ、好きにしろ」 「ふふふ。これで、一度にワッフル3種が楽しめます。コーヒーもすごく美味しいですから期待しててください」 「ああ、楽しみだ。しかし まああれだ、後輩が楽しそうでなによりだ」 「ふふー。はい、とっても楽しいですよ」 「なかなか趣きのある喫茶店を紹介してくれて、ありがとうな」 「えへへー、どういたしまして。でも実は、わたしのママの知り合いの人がこのお店のオーナーさんなんですよ。それでオープンのこと聞いてたんです」 「へえ」 「で、そのオーナーさん、実は20年くらい前、ここではないんですけど、違う場所で喫茶店を経営しててですね。そこの名前もアバカブだったんですって。あ、正確には、ひらがなで“あばかぶ”だったそうです。“喫茶あばかぶ”です」 「20年越しで同じ名前の喫茶店か。なかなかにエモいな」 「でしょう?しかも、実はその喫茶店で、当時高校生だったママがアルバイトしてたんだそうです。その縁で今もお付き合いがあるって言ってました」 「なるほどなぁ」 「ふふ。それでもって、その喫茶店の常連だったのがわたしのお父さんです」 「おう……おう?」 「何ですか、先輩」 「後輩のママ?」 「はい?」 「で、お父さん?」 「ああ。なんていうか、ママはママなんですけど、お父さんはなんかパパっぽくなくて、どうもしっくりこないんです。なので、お父さんです」 「それ、お父さん、泣いてないか?」 「いいえ。お父さんも大概ですから全然気にしてませんよ」 「大概って……どういう方向で?」 「ママ曰く、お父さん、昔はとにかく優柔不断だったらしいんですけど、今はなんていうか、こう……無為自然?」 「老子かよ……確か後輩のお父さん、写真家をされてるんだったよな」 「写真家ではないですね。お父さんの写真には芸術性は皆無です。ただのカメラマンでいいんじゃないでしょうか」 「そのふたつは何が違う?」 「写真家にとって、写真とは魂から湧き出る自己表現の発露だと思うんですよ。その成果としての芸術作品なわけです」 「だったら、カメラマンにとっての写真とは?」 「ある事象を切り取って、二次元に落とし込んだ現実です。そこには撮影者の意図はあれど、魂は込められてません」 「そういうもんなのか」 「わたしはそう考えてるってだけです。ああ、他にはお父さん、若い頃は、戦場カメラマンをしてたこともあって、全国ニュースでも報道されたりしたそうですよ」 「すごいな。そんなに高名だったのか?」 「戦場で行方不明になったそうです」 「……おいおい」 「まあ、無事だったからよかったんですけどね、でなければ、わたしは今ここにいませんから。そんなこんなでまあ、うちのお父さん、今でも普通に世界中飛び廻って写真撮ってますよ」 「普通に、ね」 「はい、普通に、です」 「そのお父さんのほうなんだよな。“力”を持ってるのは」 「そうですよ」 「それで、普通に、か。まあ、深くは聞かないよ。無為自然だもんな」 「はい、老子です」 「ふむ。で、その将来カメラマンになる後輩のお父さんは高校生の頃、将来自分の嫁になる後輩のママがアルバイトしてた喫茶店に足しげく通ってたわけだ。アオハルって感じがするなぁ」 「最初の運命の出逢いはもっとずっと前だったそうですけどね。ママがトロトロに惚気て―」   『どういうコトなんっ!?ねえっ!最近おかしいじゃん、キヨタカ!』 「おっと?」 「おやおや?」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今作は、拙作「ねえ、先輩。修羅場ですよ」のカクヨムコンテスト11【短編】用読み切り版です。 小生が鋭意執筆中の連載予定作品から1エピソードを抜き出して加筆修整した形になっております。 なお、小生はバッドエンドは大の苦手でして、ビターエンドは内容次第でなんとか許容できる程度のハッピーエンド信奉者です。 ですので、本作タイトルの「修羅場」というある意味“強い言葉”も、小生、及び“先輩”と“後輩”から見た「修羅場」ですのであしからず。 面白楽しく読んでいただけたなら幸いです。 また、こちらの紹介文の欄の最上段に置きました一塊の拙文は、今作の導入部ではありますが、読まなくても問題のないものです。小生が今作含む『ねえ、先輩。』シリーズを執筆するにあたり、頭の中にある裏設定の一つとして存在するものであり、通常このように文章化することはありません。……ありませんでしたが、この機会に応募作品本文の外で書き連ねてみました。しかしながら、そちらの内容が許諾を得ていない二次創作にあたる可能性もあるため、問題があるようでしたら、即刻そちらは削除する所存です。 応募作品本文には、そういった要素は入れておりませんのでご容赦ください。 それでは、よろしくお願いいたします。

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