あらすじ
世界の通貨が、国家よりも先に乗っ取られた。
仮想通貨プラットフォーム企業は独自の巨大な経済圏を築き、もはや“企業”ではなく、国家そのものへ変貌しつつあった。
彼らは軍を持ち、法律を定め、ついには「デジタル国家」と呼ばれる政治・行政機関を形成する。貨幣を奪われた旧来の国家は、その正統性を急速に失っていった。
その中心に立つのが、謎の天才プログラマーが創り出した次世代型仮想通貨“FMVトークン”を操る企業 VALUEX。彼らはついに金融システムそのものへ侵入し、世界の基軸通貨を完全に無効化する。
この一手は「国家の乗っ取り」と非難される一方、長年、社会の片隅で虐げられてきた人々には、新たな秩序の到来として熱狂をもって受け入れられていた。
元日本銀行の経済学者・アオイ=シライシは、
崩れゆく旧国家と誕生しつつある新国家の狭間で、人々が“どの国家に属して生きるのか”を選び始める瞬間を目撃する。
VALUEXと旧来の国家勢力との間で揺れながら、彼女は問い続ける——貨幣とは何か。国家とは何か。そして、人間とは何か。
仮想通貨の台頭は、救済なのか、それとも破滅の前奏曲なのか。秩序が書き換わる世界で、アオイが最後にたどり着く答えは、彼女自身の人間性までも揺るがすものだった。
これは、A.I.技術など急速なデジタル技術が発展する中、ひとりの経済学者が「人」であることを取り戻していく心の成長物語でもある。