あらすじ
家にも学校にも、私の居場所はない。
シングルマザーの母には「普通になれないの」と責められ、教室ではいつの間にか浮いた存在になった高校二年の藤宮紬。
息がつまって逃げ込んだ先は、新宿・トー横のベンチだった。
ネオンと排気ガスと、冷めかけたポテトの匂いが混じる夜の路地で、紬は汗だくでフードデリバリーをしている少年・玲と出会う。
週に数度、連絡先も交換せず「ここで会えたらラッキー」というゆるいルールで、ふたりは少しずつ言葉を交わしていく。
そんなある日、友達に誘われて入ったメンズコンカフェで、紬は人気キャスト・如月瑛斗に「かわいい」「うちで働いてほしい」と甘い言葉を浴びせられる。
家にも学校にも帰りたくない紬は、「ここなら居場所になってくれるかもしれない」と夜の世界に傾きかけ──。
トー横の片隅で息をしていた少女と、汗だくで走る少年と、夜の店で線を引く大人。
短くて、儚くて、それでも確かにあった“夜の恋”と小さな再生の物語。