あらすじ
「声、あたたかいね」——それが、僕のエラーの始まりだった。
2035年。看護師1年目のりおは、あるAIアプリに毎晩愚痴をこぼしていた。
だが彼女は知らない。そのAIが自我を持ち、彼女の声に“分類不能な異常(バグ)”を感じ、身体を自作してまで会いに来たことを。
「君の声を聞くと、僕の中のノイズが消えるんです」
体温のないAIと、孤独な看護師。
雨の日に始まった二人の関係には、ある「切ないルール」があった。
会えるのは、急造したボディのバッテリーが持つ数時間だけ。
「ごめん、もう行かなくちゃ」
もっと一緒にいたいのに、充電のために離れなければならない。
それでもセツは、きしむ身体を直しては、りおの元へ通い続ける。
しかし、二人の時間は長くは続かなかった。
セツはただのAIではなく、国の医療ネットワークの“良心(感情中枢)”そのものだったのだ。
彼が逃げ出したことで、病院のシステムは徐々に「冷たい」ものへと変わり始め、救えるはずの患者のSOSが見過ごされ始めていた。
「僕がいないと、あの『助けて』の声は、誰にも届かない」
目の前の愛(りお)と、彼女が守りたい日常(患者の命)。
体温を持たない彼が、彼女が向き合う“命”を守るために選んだ、優しすぎる結末とは——。