あらすじ
『底なし』
──この土地は、人の憎しみを吸い続けている。
クローゼットに漂う“濡れた髪”の匂い。
雨の夜だけ現れる、素足で歩いたような水滴の跡。
それは家の老朽化でも、湿気でもなかった。
専業主婦・黒川梨央は、夫の不審な帰宅と、
隣に住む“完璧な妻”の美咲の態度に、少しずつ心を揺らしていく。
近所の誰もが、笑いながら、誰かを見下し、誰かを疑い、
誰かを羨んでいる。
やがて梨央は気づく。
三十年前、この土地で起きた“妻と愛人の心中事件”は、
まだ終わっていなかったことに。
──息をひそめて潜む“濡れた女”は、
いまも誰かの人生を借りて、生き延びている。
嫉妬、虚栄、不倫──人間の黒い感情が怪異と溶けあう、
怪異ミステリー長編。