あらすじ

――小さな町の小さなホテルで  小さな町の小さなホテルには、誰にも 語られない“事情”を抱えた人々が集まって  いる。  世界を二十年渡り歩き、ようやく日本に  戻ってきた料理人・神谷奏。  旅の理由を聞く者はいるが、本人は語る  気もない。  だがひとつだけ確かなのは――  彼の料理を食べた者は皆、泣きそうな 顔になるほどの“温度”を感じる ということだった。    厨房では、若き料理人兼パティシエの 佐山結が 黙々と包丁を動かしていた。  震災で避難したあの日、心を救ったのは 名も知らぬ料理人がよそってくれた 温かな炊き出し。  その味を胸に刻んだまま、彼女は今日も 料理に向き合う。  ――まだ見ぬ“恩人”を探すために。    ホテルを仕切る支配人・木島五郎は、 己の直感だけで生きているような男だ。  父から受け継いだ古いホテルをなんとか 持ちこたえさせてきたのは計画でも努力  でもなく、ただ「なんとなくうまくいく 気がする」という彼の妙な予感だけ。  そして今日もまた、その予感は 静かに動き出していた。  昼は無骨なつなぎ姿で工具を操り 夜は妖艶なバーテンダーへと姿を変える  施設管理兼バーテンダーの田町舞。  彼女の手が入れば壊れたものは 必ず蘇り彼女のつくる酒を飲めば 沈んだ心さえ立ち直ると言われていた。  フロントで柔らかい笑顔を向けるのは、  元キャバ嬢の三条京子。  外国の俳優に憧れすぎた結果 五カ国語を自在に操る存在になって しまったがそのぶん“心の声が漏れる” という致命的な癖を抱えている。  もう一人のフロント、 元ホストの江藤快。  こちらも五カ国語を使いこなし お客の表情や仕草を見ただけで心境を 読み取る事ができるが女性限定の能力。    ホテルの裏側では、清掃係の山本静江が 黙々と働いている。  が働いているその姿を見た者は一人も いない。  “清掃中を見られれば即退職” そんな奇妙な契約を守り続けて三十年。  どこにでもいて、どこにもいない 幽霊のような存在。  そして、どんなマイナー食材でも 必ず調達してくる謎めいた食品卸業者 川谷はじめ。  この男が現れると、厨房の空気は なぜかざわつく。  さまざまな背景を抱えた人々が働く  このホテルの日常と非日常の物語――

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カクヨム
カクヨム2025/12/04
  • 現在の作品ホテル「リトルフォレスト」と季節の人々