あらすじ
1960年代――世界はまだ、「レゾナント(共鳴者)」と呼ばれる超能力者の存在に揺れていた。
火や水を操り、自然法則さえねじ曲げることができる彼らは、軍事と政治の思惑の中で、人として扱われることすらままならなかった。
箱根の山奥にある極秘研究所。
研究補助員の日下部暖人は、そこで“火のレゾナント”として隔離されていた少女・火野りんと出会う。
実験体である彼女に、人間として接する日下部。そんな日下部に、りんも次第に心を開いていく。
二人はやがて、決して抱いてはならないはずの感情を抱き、“人として生きるための逃避行”へと踏み出してしまう。
しかし、国家と時代は、まだ彼らを許すほど成熟していなかった。
――これは、レゾナントが市民権を得るよりもずっと前。
たった二人で、世界の理不尽と運命に抗おうとした、
のちに「箱根の火事件」と呼ばれる悲劇の物語である。