あらすじ
この世界には、善悪という曖昧な指標がある。
誰かの都合によって塗り替えられる、脆く不確かな境界線。
“魔王を倒す勇者こそ正義”──そんな常識は、人々が恐怖と平穏のために作り上げた仮初の光にすぎない。
親を失い、村に育てられた少年ウィル・フィアスは、
王の気まぐれにも似た任命によって突然“勇者”へと選ばれる。
祝いの声が満ちる村で、ただ一人、彼だけがその栄光の意味を冷静に見つめていた。
それが祝福ではなく、生贄を飾り立てるための美辞麗句だと気づいているから。
王の微笑みさえも信じ切れず、
幼馴染の手の温度だけが唯一の現実として残る中、
ウィルは静かに旅立ちの時を迎える。
──いつか魔王と出会う時、
彼は果たして“正義”の側に立っているのだろうか。
あるいは、自らが憎むはずの“悪”へと形を変えていくのだろうか。
善も悪も、光も闇も。
何が正しく、何が間違いなのか。
その答えを決めるのは、きっと誰でもない“彼自身”だ。
この物語は、
勇者が歩いた果てに“魔王”という名が待ち受ける、
矛盾と真実のラプソディ。